ある森に、いっぽん、とてもかわいらしい、もみの木がありました。この小さなもみの木は、ただもう大きくなりたいと、そればかり願っていました。森の生活にも退屈しています。この森では、クリスマスが近くなってくると、いつも木こりがやって来て、いちばん大きい木を二、三本切り出します。これは毎年のおきまりでした。若い小さなもみの木は、切り倒されて荷車につまれ、森を出ていく他のもみの木たちを見て不思議がります。みんな、どこへいくんだろう……。もみの木は、じぶんも早くよその世界へ出たがって、毎日毎日、気が気でありません。そしてある年のクリスマスの季節、ついにこのもみの木にも切り倒される日がやってきました。クリスマスツリーとして見事に飾り付けられた、もみの木。しかし、やがてクリスマスも終わり……。「楽しめるときに、楽しんでおけばよかった……」、もみの木のため息が聞こえてきます。ちょっぴりせつなく、心にしみる「もみの木」のお話をオーディオブックで味わってください。※ 本作品は発表時の未熟な時代背景から、今日の社会では一般的でなく、不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。しかし作品のオリジナル性を最大限に尊重し、なるべく当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。
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