高原の静かなティー・タイムは、にぎやかな劇を挟んで、再び画面にあらわれる。小説においては、このような物語も可能なのか?そうだ、むろん、十分に可能だ、とでもいうような一編。最初と最後に、1つの視点がある。その視点はフィクスで、テレビ画面を観ている。紅茶のCMが表れる。秋の高原のティー・タイムだ。CMが終わったら、番組が始まるだろう。こちらはうってかわってにぎやかだ。うるさいほど。番組の背後にあるアクションの積み重ねも、せわしない。やがて、人によっては「惨劇」と呼びたくなる場面を映したあとテレビは再び、高原のティー・タイムに戻る。【著者】片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
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